ライブエンタメとしてのトークセッションと記録方法

最近、セミナーやワークショップに行く機会が重なりました。
有料無料問わず、「これは何が何でも行く!」というものから「(テーマや人に)興味あるし聞いてみたい」というものまで、せっかく時間を割いて行くわけですから、何かしら収穫を得ねばならないと毎回意気込んでおります。

【参考】ここ数カ月に参加したセミナー&ワークショップ体験記事
『子供とスマホのつき合い方』 ハフィントンポスト主催
『地方で事業を始めたい人が、活用するといいい地元資産』 co-ba主催
『家事の未来をデザインするワークショップに行って来た』 ロフトワーク主催

しかし、何度かセミナー等に行くに従い、共通する不満が多い事に気づき、その一解決案を考えてみたのでまとめておきたいと思います。

※この記事を書いた数日後、ロフトワークが2014年3月12日に開催した「Experience Design 2014」(XPD2014)で、「ビジネスイベントにおけるよい体験を考える」という身にワークショップがあり、今回のエントリが正にそのよい体験についての答えの一つになると思いました。


今回、取り上げたい不満は、3名以上のゲストスピーカー(以下スピーカー)が、ファシリテーター(又はモデレーター。以下ファシリテーター)と行うトークセッション、パネルディスカッション(以下セッション)においてのものです。

主な不安に以下のようなものがあります。

・記録が大変
(登壇者のトーク内容や資料を上手に記録できない。ノートに録れない)

・時間が押す
(ファシリテーターがイケていなくて登壇者をうまく仕切れない場合と、登壇者がイケてなくて話がダラダラ長い場合がある)

・時間が押すことに伴う、質問時間がないこと。質問ができないこと。
(質問ができても数人で終わってしまう。運任せ。もっと質問したい!)

・名刺交換の長蛇の列。
(名刺交換で早い者勝ちで話しこまれていた時、話が終わるのを傍で待っている時のみじめなこと。。※私はスマートに割り込めません)


■セッション内容をタイムラインで可視化する

まず焦点を当てたいのが「記録」の方法について。

2名以上のセッションとなると、ミニマムスピーカー2名、ファシリテーター1名の計3名が発言をします。
これをセッションに行き始めた頃の私は、全員の発言を全文とはいかないまでも時系列に沿って下記のようにメモっていました。



冗長極まりない。

紙面足りない。


ポイントとなるべき点は要約して録りますが、紙面が足りなくなってくると、空いているメモスペースを探してさまよい、最悪メモがあちこちに散らばってしまって、文脈や要点がわからなくなってしまったり、後で振り返りにくくなったりしてしまう事がありました。

ひとつメモる場所、ひとつまちがえて~
迷い道く~ねくね~

です。




さて。


これではまるでだめおだと考え、以下のように登壇者毎のタイムラインを作り、セッションの内容を少し可視化する方向で記録することにしました。
一番左にファシリテーターが予め用意したテーマや質問を。それらに対するスピーカーの発言を右側に書き込んでいいきます。
(※SNSボタンは無視して下さい)



この方法に変えて良かった事は以下のような点です。

・後で振り返る時、セッションの流れや雰囲気がよくわかる、思い起こせる(ような気がする)。
・登壇者の発言の良しあしや質がわかる。
 >どの発言がセッションを盛り上げるキラーパスになったか。
 >誰がセッションを停滞させていたか。
 >ファシリテーションは適切だったか。 といった事。


さらに、主催者にとっても良いアーカイブになることは言う間もなく、
ファシリテーターの立場であれば、この方法でセッションを振り返った時、
「ここで発言を一度切らないといけなかったな」
「この質問は、こうした方が良かったかもしれないな」
といった反省ツールとして使えるのではないでしょうか。
(これはスピーカーにも当てはまります。「オレ、話なげーなー。次はポイントを押さえて話そう」とか)

このように使ってもらう事で、冒頭に挙げたセッションの不満である「時間が押す」ことの解決につながる一手段になるように思います。



■良い質問がセッションを盛り上げる。

ここからは妄想の翼を広げて、この記録方法がWebサービスになった時の体験について考えたいと思います。

セッションの不満に「記録をとるのが大変」「時間が押す」「質問できない」等を挙げたのですが、この記録方法がシステム化されると、以下のような感じでスピーカーのプロフィール(SNSアイコン及びリンク)を表示し、発言と流れを可視化することができます。
ファシリテーターの質問は予め登録しておくこともできるでしょう。



これが会場のスクリーンに投影された状態でリアルタイムで反映されていくと、聴衆にとってはわかりやすく、登壇者にとっては発言内容の是正、話しすぎの抑制などの効果が期待されるのではないでしょうか。

ここに、聴衆からの質問や感想等のフィードバックを投稿できるラインをもう一本設けてみましょう(ピンクのライン)。


ファシリテーションがイケてなくてセッションが盛り上がらない場合。
トーク内容が本来の趣旨と離れてしまいそうになった場合。

聴衆からのフィードバックには、それらを打開、修正してくれる力が(時に)あるように思います。

こんな事は会場から声を上げれば済む話なのかも知れませんが、それができる人は極々限られていますし、声を出して発することと、テキストにする事では、後者の方が冷静に内容をまとめられるように思います。


こうした聴衆の質問には、会場にいるその他の聴衆から内容に対する「いいね(的なもの)」が押されるようにしておきます。



で、質疑応答時間が少ない中でも、いいね数の多い(=みんなが聞きたい内容)ものからスピーカーに回答してもらうようになれば、質問する順番にも、ファシリテーターから指名される運にも左右されません。


よい質問は、その道の専門家であるスピーカーに対しても、「アッ」と思わせる力があると思いますし、そうした質問がキッカケとなり、新しい発見につながっていく事があると思います。
すごい美人スピーカーに対して「彼氏はいますか?」という質問に票が集まる衆愚化が懸念されるかも知れませんが、そこは聴衆を、スピーカーを信じましょうと。
(良いセッションであれば、そんな質問を聞いている場合ではない、という事になる)


話が少しズレますが、日本人は観客としてゲームに参加していく力が弱いと感じます。
観客という文字通り、見ること、聞くことだけに徹しなければいけないような気がするのでしょうが、観客が場を盛り上げることの効果は間違いなくあります。
サッカー等で一つ一つのイケてるプレーに拍手が送られるなど、観客がイベントの開始と終了時以外のタイミングでもイベントに関われる要素が増えているように感じますが、こうしたトークセッション等の舞台では、まだまだ観客はただ静かに聞いているしかないようになっているのではないでしょうか。
主催者の方々にはこうした聴衆、観客がよりよい体験を得られるよう、場をデザインしていって頂きたいものです。
(そういう点でもこのシステムは、控えめな日本人に合っているように思うのですが。。)

話者が一名の講演会などは、その人の著書で見聞きしたことだったり、会場に投影されたパワポと同じ内容だったりしてつまらない事が多いですが、セッション等はそうした予定調和要素が少ないため、思いもしなかった話に発展する事があるのが醍醐味。
まさに、ライブエンタメなのだと思うのです。

せっかくライブな場にいるのですから、その利点は活かしきってほしいですね。


■質問のためなら金払う

最後にマネタイズについて言及しておきたいと思います。

自分の中で「これだけは聞いておきたい」という質問がある場合、上述の質問投票システムでも選に漏れた場合は、お金を払ってでも質問をしたい=回答してほしい事があります。
また、セッションで新たに生じた疑問について、よい質問をした聴衆の方、そしてスピーカーの方と当該テーマについてもっと意見を交わしたいと思う事があります。
それが実現できるのであれば、私はこれに対してお金を払いたいと思います。

これがセッション後の飲み会(交流会)、などになってしまうと、名刺交換に長蛇の列ができて順番が来るまであきらめて帰ったり、ろくに話もできずに終わってしまったり、いち早くスピーカーをつかまえた人に独占されて、話すのをじっと待つしかなかったり。

実にしんどい。

そこで上述のシステムで、セッション終了後も参加者が交流できるようページを残しておいて、スピーカーがそこに参加してくれれば、スピーカーの報酬を交流したい聴衆が折半するという仕組みが作れるのではないでしょうか。



以上、記録方法に端を発して、トークセッション等の体験向上企画システムに話が及びましたが、トークイベントやワークショップ等がカジュアルに開催されるようになった今、スピーカー、ファシリテーター、聴衆個々のレベルアップはもちろん、そのレベルアップをサポートするこうしたシステムが求められてくると考えています。


※関連エントリもよろしければご覧ください※
『キロク学会で新しいトークセッションの記録方法を実践してきたよ』
『「おしゃべり以上、ディベート未満。」~新しいトークイベント企画について』

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