キロク学会で新しいトークセッションの記録方法『話譜』を実践してきたよ

先週、こんなイベントにレコーダーとして参加してきました。

キロク学会 #00 キックオフ!〜記録×アーカイブ×コミュニケーションの可能性をシェアしよう〜


ざっくりいうと、“記録魔が集まって、Web時代の新しい「記録×アーカイブ×コミュニケーション」の形を考えよう”という会。

最近トークセッションのライブエンタメ的価値と記録方法について色々考えていて、その考えをまとめたブログを合同会社++の小倉ヒラクさんにシェアしたところ、前田が考えている記録方法の実践の場としてどうですか、と声をかけてもらった次第です。

参考ブログ:
『ライブエンタメとしてのトークセッションと記録方法』


詳しいレポートは合同会社++さんやロフトワーク中田さんのブログで見られると思うので、ここではトークセッションの新しい記録方法と可能性についてまとめておくゼッ。

前半は各スピーカー(キロク芸人)の記録方法やアーカイブにまつわる活動についてのプレゼン及び事例紹介。
後半がスピーカーと司会者によるトークセッションという構成で、私はこのセッションのレコーディングを担当しました。


まず、私が試みたかったトークセッションの記録方法は、スピーカーを横軸に並べて複数のタイムラインで記録するというスタイルです。


※試みたかった理由は下記記事を見てね。
『ライブエンタメとしてのトークセッションと記録方法』


■トークセッションの記録=話譜を見よ!

この方法で記録したものを、誤字脱字をチェックし内容を整理してプリントアウトしてみました。


ながっ・・・。

ミーティングテーブルに収まらない・・・。



床に広げてみるとこの長さ。


どんくらい長いかっつーと、、、




大王イカか。

可読できる文字サイズでA3プリントしてこの長さ。。



■いきなり結論

冗談はこのくらいにして、あらためてこの方法で内容を振り返ってみましょう。


長すぎて読めない・・・。

これはプリントして見るより、PCやタブレット等で見た方が良いですね。


で、結論ですが、複数のタイムラインスタイルは悪くないと感じました。

その理由を挙げますと、まず、縦軸で記録するよりライブ感が出ている気がします。

これが一般的なトークセッション内容を縦軸で記録した場合の見え方。


で、こっちが今回試した横軸(複数タイムライン式)


なんというか、喋っているスピーカーとそれを聞いているスピーカーの間(ま)のようなものが伝わってくる気がするのです。(ここマニアックだな。。)

※後日、このスプレッドシートが公開されると思いますので、その時にあらためてご覧になって下さい。


では、その他の良いポイントも挙げていきましょう。


(1)司会者及びスピーカーの発言や質問の良しあしがわかりやすい。
 
誰かの発言や質問がキッカケとなって、「それ面白い!」といったような新しい気づき、発見が起こったり、話の内容が盛り上がったりしたポイントがわかりやすくなるという事。
逆に言うと、「ここよい質問だったけど、スピーカーがうまく拾えなかった」とか「違う方向に話を持っていってしまったなぁ、残念」ということがわかります。


(2)セッション内容を俯瞰しやすい

「この時間帯、このテーマで盛り上がっていたんだな」といった事がわかりやすくなります。誰かが独占的に話している場合、その人のタイムラインが文字で埋め尽くされていきますが、スピーカーの発言が左右によく触れていると、話が盛り上がっているという事がわかる。
(※このあたりは縦軸であっても、可視化の工夫次第で何とかなる気がしますが。)


(3)よい質問や発言、引き取りを見つけやすい

(1)に通じる点でもありますが、話題が盛り上がったよい発言を見つけやすいため、「あの質問よかったよなぁ」と一人ごちるのはもちろん、主催者やスピーカーの振り替えり資料として役立てる事ができます。


こうしたメリットをうまくシステム化したりルール化する事で、トークセッションをより魅力的に、参加者(聴衆)のより豊かな体験に結び付くように、かつマネタイズにまでつなげられるよう考えておりますが、それは別の機会に譲るとして、以下にそのための課題や雑感をつらつらと書き連ねておきます。


■課題

【記録者】
・横軸を行ったり来たりするので、スピーカーは司会者含め5名が限界では。

【閲覧者】
・横軸を行ったり来たりすることに(まだ)目が慣れていない。

【スピーカー&司会者】 ※どっちかというと記録者の希望
・自分の話は言い切ってほしい。人の話は聞ききってほしい。
(人の話を引き取るのは良いのだが、言葉が切れるまで待ってほしい。・・・でないと記録しにくい)


※以下は本記録方式とは別ですが、トークセッションを開催する上で気づいた点です。

【司会者】
・司会者はスピーカー達の話を盛り上げるだけでなく、スピーカー達と参加者をつないでいく役目を担う必要がある。
・スピーカーがその道のプロだった場合、セッションはハイコンテキストで進んでいくため、そこに追いつけない参加者のために、用語や人名(今回でいうとヘンリー・ダーガーとかアーキビストとかサイニーとか)等の補助、翻訳をしてあげてほしい。
(※そもそも、それを必要としないセッションもあるが)



■その他雑感

・セッション終了後、両肩にずっしりとした疲労感が残った。
 自分もトークに参加したかのようなやりきった感。記録したった感。スポーツ的な感覚がした。

・記録の振り返り中、いい質問、いい引き取り方を見ると、「グッジョブ!」とほくそ笑んでた。。

・エンタメ要素を入れて、MVPやMOMならぬ、MVQ、MVSとか決めたら面白いかなぁと思う。
 他にも、他者の発言を引き取って話題を盛り上げるといった、ベストレシーバー的な評価も与えたくなる所。

・振り返り中、将棋の棋譜ならぬ『話譜』を愛でるような感じが楽しかった。



■システム化の可能性

ここまで複数タイムライン式でセッションを記録した事について書いてきましたが、この方法で記録すること自体がゴールではありません。
webシステム化してリアルタイムにセッション会場に投影し、参加者が適宜質問や感想を投稿でき、セッション終了後もフォーラム機能で意見交換できるようにすること。
それが目指している姿です。

本記録方法のシステム化(Webシステムという意味と、TEDやビブリオバトルのような新しいトークイベントシステムという2つの意味)においては、以下のようなポイントが必要です。

・セッション終了後も参加者や(可能なら)スピーカーが、気になった点について意見交換できるようなフォーラム機能を持たせる
・レコーディングした内容を後日参加者が発言単位でエンベッドできる機能

※即ち本システムはトークセッションのリアルタイムレコーディング機能を持ちながら、アーカイブ素材としても、フォーラム(コミュニティ)としても機能するシステムになるのです。

・発言をリアルタイムにプロジェクタ等で反映
・参加者がもっとセッションに関われるよう、リアルタイムな質問送信&反映機能
・その質問への評価(いいね、聞きたいね等)機能
・セッションのルール化(発言は聞ききるとか、司会者一名と記録者一名は確保とか)
などなど。


いやー、これ楽しそうだしトークセッションのスタイルや日本人のセッション能力を向上させられそうな気がするから、もうちょっと考えよう。

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