子どもの未知を切り拓くアナロジーとアフォーダンス。

常識的にはそのような使い方をしないと考えられているモノを、自分の果たしたい目的のために、常識的ではない(と、当の本人は思い込んでいる)使い方をする――という能力は、色々なプロジェクトをしていると非常に大事な力だと思います。
よくある話では、従来それにしか使っていなかった技術や素材を、異なる分野の製品に活用するといったような類のものです。

一般的にこうした力、思考方法を「アナロジー・類推・見立て」と呼びますが、最近スキーマの存在を知ってから(参考『スキーマの手順・構造を変化させるところに、イノベーションやビジネスアイデアのヒントがある。』)、この力は大人よりも子どもの方がprimitive(原始的、未熟)な状態で豊かに持っていると考えるようになりました。

そんな仮説のもと開催した勉強会(『子どもの視点から学ぶ、イノベーションに繋がる観察力、編集力、表現力』)では、アーネ(5才)が見せた見立ての事例をいくつか紹介しましたが、「常識的にはそのような使い方をしないと考えられているモノを、自分の果たしたい目的のために、常識的ではない使い方をする」力は、アナロジーだけではないという経験をしましたので、キロクしておきたいと思います。


こちらの写真は、先日アーネがECCの教材カードを切り抜いてファイリングしていたものです。
カードを入れていくことで冊子全体が厚くなってきたため、それまでは一人で作業していたのてすが、カードを入れやすくするため「パパ、おさえてて」と言いました。
ちょうど私は別の作業をしていたため、「ちょっと待ってて」と言い終わろうとする寸前、「あ、いいや」と斜向かいの椅子の背もたれ部分と机の間にできていたスペースにファイルを差し込んで、ファイルをおさえることに代用したのです。

ここで考えたいのは、これは「アナロジー」によるものなのか?ということです。

アナロジー思考という言葉があるように、アナロジーはどちらかというと、よくよく頭で考え、対象となる事象の構造を見抜くといった「考える」ことを要請するものと考えますが、この時のアーネはこうしたことを考えるよりも早く、直感的に行動していたように見えました。

考えるよりも感じる。
それはアーネが対象に積極的に働きかけたというより、対象と状況に誘発されたような感じです。

カードをファイルに入れるために、ファイルをおさえたいとうアーネ(人間)の「強い目的・要望」。
その作業を行っていた机と、斜向かいにあった椅子。
この二つを「状況」とした上で、斜向かいにあった椅子(事物)の背もたれの両端が突き出た形(構造)」が、ファイルをおさえるという「機能・性質」を提供した。
(これらの状況のもと、事物からある機能が引き出された、という言い方をしても良いと思います)

これは同じ事物であっても、状況が変われば事物から引き出される機能は変わる、ということです。これを「アフォーダンス」とよぶと私は解釈していますが、アーネのファイリングの出来事は、アナロジーよりもアフォーダンスなのではないかと思えます。

どちらかというと人間の側にあるアナロジーと、(人・状況・事物の関係性の中で、どちらかというと)事物の側にるアフォーダンス。
事物の側にあるとはいえ、アフォーダンスも人の側に何かを成し遂げたい・解決したいと願う気持ちがなくや 、椅子は椅子という固定概念があってはアフォーダンスの感度は低いままでしよう。そう考えると、この二つの能力を有することは、アイデア発想、未知を切り拓くことなどに大変有益ではないでしょうか。

・・・なんてことを、早朝6:00前にアーネに起こされ、カードの切り抜きを手伝いながら思った次第です。

以上、親バカが最前線からお伝えしました。

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