第4回 プロジェクト工学勉強会 ~プロジェクトにおける「未知」の編集方法とは?ダイジェストレポート

2017年12月14日に、ドコモイノベーションビレッジで『第4回 プロジェクト工学勉強会 ~プロジェクトにおける「未知」の編集方法とは?』を開催しました。
今回はゲストを迎えて初めて行う勉強会であり、その記念すべき第1回ゲストとして、編集工学研究所の橋本英人氏に登壇頂きました。本記事はその勉強会のダイジェストレポートです。

まず、『プロジェクト工学』というものを初めて耳にする方に、概要をご紹介致します。

プロジェクト工学とは、システムやプラント開発といった狭義の意味ではなく、「世の中のあらゆる社会的な活動を『プロジェクト』ととらえ、これを工学的なアプローチで解明し、より確実なプロジェクト推進方法の確立を目指す学問」です。

2017年4月に第1回を開催して以降、PM理論とリーダーシップについて、人気漫画『キングダム』や『HUNTER×HUNTER』から解説を試みたり、クラウゼビッツの格言や将棋の「大局観」などからプロジェクトマネジメントに役立つ考えを紹介するなど、座学的な内容の他、我々が発案したプロジェクトのためのエディティングツール『プロジェクト譜(以下、プ譜)』を用いたケーススタディ紹介、ワークショップなどを行ってきました。

過去の勉強会の様子は、下記のダイジェスト動画集を。



また、プロジェクト工学の詳しい説明は下記の記事をご覧下さい。
ソフトバンクビジネス+IT
『プロジェクト工学のアプローチで探る「計画が計画通りに進まない理由」』



本記事では、このプロジェクト譜について少し紹介を致します。

『プロジェクト譜』とは、工学の3原則、「観測」、「記述」、「制御」にのっとった、プロジェクトの「可視化」、「仮想演習」、「編集」ツールです。
プロジェクトの「ゴール」(プ工学では「勝利条件」と称します)、そこに到達するための「中間目的」、「中間目的」を実現するための「施策」。そして、プロジェクトを行うための所与の条件、たとえば「人材」、「予算」、「技術」、「品質」、「環境」などの「廟算八要素」といった構成単位があります。
これらを一局面一シートで記述し、プロジェクトのプロセスを可視化することで、プロジェクトマネージャーの認知的負荷を減らし、これをメンバーやステークホルダーと共有することで、意思の統一(見解の齟齬)、個々のメンバーの仕事が他者にどのような影響を与えるのか、また諸施策が全体の戦略にどのような影響を与えるのかといったことをわかりやすく伝えるというメリットがあります。


この外在化された表現というのは、いわば一つの「問題表現」です。
私はプロジェクトマネジメントというものを、問題表現・問題解決の行為であるととらえており、自分にとって有利なように問題を表現することができれば、プロジェクトは失敗しないと考えています。
しかし、プロジェクトとはそのほとんどが自社やプロマネにとって「未知なるもの」だとすると、当初描いていた計画や予想から外れる事象・情報に遭遇した際、自分にとって不利に受け止めてしまったり、うまく活用すれば有利になったであろうものを無視してしまったりします。

そのため、プ譜を記述する際にも、遭遇した事象をどのように表現(記述)するか。それによって影響を受ける中間目的をどのように書き直すか。つまり、問題をいかに表現しなおすかということが、プロジェクトにとってはとても大きな意味を持ちます。

プ譜はプロジェクトのプロセスやつじつまを明らかにするものではありますが、それとインタラクションすることで、より豊かで、多様な表現をすることをサポートするものではありません。あくまで個人のセンス、スキルに依存します。

そこで、この遭遇した事象・情報をいかに多様にとらえるか。いかに情報を編集するかという力をトレーニングするため、あらゆる情報を組み合わせ、新たな価値を見出す「編集」技術の方法を開示し続ける、編集工学研究所さんをお招きし、勉強会を開催した次第です。

編集工学は1987年に松岡正剛氏を創始者として生まれ、編集の仕組みを明らかにし、社会に適用できる技術として構造化した学問です。
今回は約80分という短い時間でしたが、数多くの編集工学メソッドを紹介頂き、そのいくつかを使って実際にトレーニングすることができました。ここではそのいくつかをご紹介したいと思います。


●ブラインドスケッチ
[内容]
・テーブル毎に、お題となる「絵」が配られる。
・その絵を見てその絵がどんな内容かを説明する人1名、描く人2名以上を決める。
・描く人は、説明する人の説明を聞いて「絵」を再現する。
・説明する人から、描く人への質問は禁止。
・説明する人が、描く人に対して「そうじゃない」や「もっと右」などの直接的な指示は禁止。
・描く人は他の人の絵を見るのも禁止。

[結果としてどうなるか]
・よほど説明がうまく、上手に聞ける人でないと、へんな絵になってしまう。

[このトレーニングで得られるもの]
・自分が目にし、頭の中を通して他者に伝えるのはとても難しいということ。
・どのように説明するかで、他者のアウトプットが全然変わってくるということ。


●情報の地と図
[内容]
・情報には「地」と「図」があると見る。
・「地(見方)」を動かせば情報の意味や可能性を、多様に引き出すことができる。
・情報の「地(見方)」を変えると、「図(意味)」も変わる。
・「図」の情報だけに注意して、「地」=「見方」を固定化しているのは、固定概念に捉われてしまっている。
・状況を常に打破していく。

[この見方を身につけるとどうなるか]
・プロジェクトで遭遇した事象や、変更を迫られた中間目的の表現を多様に言い換える基礎体力が身につく


●ロール、ルール、ツール
[内容]
・ロールは役割。ルールは規制。ツールは道具。

[この見方を身につけるとどうなるか]
・プロジェクトの「施策」を具体化し、実行するための「ロール・ルール・ツール」を考えることで、
 より効率的に、或いはより正しく行うことができるようになる。


橋本氏からは、プロジェクトという「未知」を、自身やプロジェクトにとっての「可能性」にするために、
・「見方」を多様に動かすこと、
・情報を「言い換える」ことの重要性をトレーニングを通して語って頂きました。

本当はもっと詳しく説明することも可能ですが、本格的に理解するためには、イシス編集学校の「守」基本コースというものがありますので、ぜひそちらを受講下さい。(2018年4月16日開講です)
今回の勉強会の様子は、下記の動画でご覧頂けます。



なお、昨日はこれまでのプロジェクト工学勉強会アンケートで要望の多かった「プロマネ飲み会」を初開催しました。


そして、グラフ中もありますが、プロマネ飲み会の次に要望の高い「少数精鋭でプロジェクト工学の理論化を研鑽する補講の会」と、「会員組織化して、定期的な情報交換や情報発信を希望する」を実現するため、2018年のプロジェクト工学勉強会は、今後プ譜を用いた感想戦(3~4人を一グループとし、プ譜を見て考えた施策や実行した結果に対するフィードバック・振り返りの実施)を定期的に開催し、その情報発信も行っていく予定です。
ご自身のプロジェクトをケーススタディとして提供し、勉強会メンバーとの感想戦を希望するという方がいらっしゃいましたら、ぜひコンタクト下さい。

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