【勉強会レポート】未知の社会におけるライフデザイン(子ども編)~超高齢少子多死時代に向けて Vol. 6~

2018年2月8日に、エンドオブライフ・ケア協会(以下、ELC)さんと、「未知の社会におけるライフデザイン(子ども編)~超高齢少子多死時代に向けて  Vol. 6~」という勉強会を開催しました。

このブログをご覧頂いている皆様にはご承知の通り、私は毎度娘のアーネとジージョが見せる情報編集力や観察力、問題解決能力に驚き、考えさせられ、娘たちの未来にこの上ない希望の光を見ております。
しかし、寝室で眠る姿を見ておりますと、「私が死んだあと、娘たちはちゃんと食っていけているだろうか」、「迷いながらもしなやかに生きていけているだろうか」、と不安になります。
そうしますと、では私は娘たちに「どのようなモノゴトを残すことができるだろうか」、「どんな力を育んでおけば良いだろうか」ということを考えてしまい、夜な夜な眠れなくなります。

今、アーネは6歳。ジージョは2歳です。
娘たちが成人を迎えるころ、世のなかはどうなっているか。
アーネとジージョが、自分の人生というプロジェクトを進めていくために、どのような力が必要か。
そんなことを考えていた折、ELCさんの「超高齢少子多死社会」をテーマにした活動を知り、一緒に勉強会を企画しました。

内容としては、
「超高齢少子多死社会」の概要について、ELCの千田さん。
「超高齢少子多死社会」で食いっぱぐれない職業としての「プロジェクトマネージャー」や、働き方についての解説を、パラダイスウェア社の橋本さん。
プロジェクトを進める(回せる)人材になるために必要な力について、ELC理事の小沢先生と前田がマイクを取り、ご来場のみなさんとともに考える、というものでした。


子どもたちのどのような力を育むかを考える上で、「超高齢少子多死社会」は私たちに問題への取っ掛かりを与えてくれます。

「超高齢少子多死社会」とはどんな社会か?

私たちがまだ経験したことのないこの社会は、エンドオブライフケア協会の千田さんの言葉を借りると、「少ない生産年齢人口で多くの高齢者を支える社会」となります。




これを仕事の現場に下ろすと、「一人で何人分も働かなければビジネスも社会も成立しない状況」と言えます(橋本さん)。

こうした状況を回避するため、移民受け入れやAIやロボット、各種デジタルツールなどを使用しようとしている訳ですが、そうした施策の立案と遂行、新サービスの企画と運用などを行っていく上で、プロジェクトを進めていくための力が必要になってきます。

では、「プロジェクトを進めていくための力」とは何でしょうか?

私は「プロジェクト」を「未知を既知にしていく行為」と捉えておりますが、未知を既知にしていく上では、ざっくり挙げるだけでも下記のような力や態度が必要だと考えます。

何がなんだかわからない状況に対して、今あるリソースやわかっていること等を頼りに、観察・仮説・推論・実行・省察していく力。
プロジェクトを進めるにあたって、大局的なプランと局所的なプランを立てられる力。
問題を理解し、自分が解きやすいように問題を変形させたり、表現しなおしたりできる力。
目の前の出来事に好奇心をもって、自ら試してみようとする態度。
一度経験したことを抽象・捨象し、別の何かに活用できるようにしていく力。
他者と協働していける力(そのために必要な言葉や図で伝える力、相手の話をきちんと聞ける力、自分と他者は違うものだという態度)などなど。


他にも挙げていけばキリがありません。
最近では「VUCA(Volatility-変動性、Uncertainty-不確実性、Complexity-複雑性、Ambiguity-曖昧性)」な時代というキーワードが注目されておりますが、アメリカでは2000年代初頭から、このような時代において必要とされるであろう力を「21世紀型スキル」と称して、企業からの要請を受ける形で、スキルの体系整理、学校システムへの導入を試みています。


その手段の一つとして、「PBL(Project Based Learning)」などがあり、一定の評価を得ているようですが、私の不安は、そうした試みが娘たちが通う地方都市の公立小学校でも体験できるのかということです。


かつて、子どもの「生きる力」を育むことを目的に、「ゆとり教育」が実践されました。
お題目を見れば至極結構なものでありますが、この実践は失敗に終わります。



もし仮に、21世紀型スキルを学校で教えようとなったとしても、これとまた同じようなことが起きるのではないか?

そもそも、そうした教育を受けてきていない教師が、こうしたスキルを教えられるとはとても思えません。
アーネは今春小学生になりますが、残念ながら小・中在校中にこうしたスキルを教えられる教員を養成できていることはないでしょう。

以上の事を鑑みれば、こうしたスキル・力を学校で身につけることは、よほどの力量のある教師に恵まれなければ、期待できないことは明白です。

じゃあ、どうするのか?

家庭でやるしかないでしょ、というのが今のところの私の結論です。

教師以上に、プロジェクト的なことを行い、その力の必要性を感じている私たちがやるしかない。
もちろん、教科書などありませんから、そこは一人一人が徒手空拳でやる。
以下は親バカ9割9分で読んで頂きたいものですが、わが家であればこんなことをしています。


●好奇心を育むために、娘のなんでを記録して、その筋の会社や人々に聞きに行く。
(実践例:4歳娘が「なんで?」と質問したこと100選

●よくわからな問題に取り掛かりやすくできるよう、子どもに三択問題をつくらせる。
(実践例:娘との3択クイズ遊びがイヤなんだが、“問題を選択式に置き換えら”れるようになるのは大事。

●言葉だけでは理解できない問題を、フィジカルで理解できるようにするために「未測量」の概念を大切にする。
(実践例:未測量 ~幼児期の算数教育に必要な「原体験」

●自分でルールをつくることができるように、遊びのルールづくりをまかせる
(実践例:4歳娘が再発明した「しりとり」


今回の勉強会では、このような「プロジェクトを進めていく上で必要であろう力を、家庭でどう育むか?」というお題で、参加者のみなさんにアイデアを出し合って頂きました。

●限られた条件でモノゴトヲ進めていく上で、異なるモノゴト同士を関係づけていく力。

●創造性を育むために、なるだけ完成されたおもちゃを与えない。

●カレーを食べたいと子どもが言っても、予算は?具材は?と子どもたちに考えさせる。

●固定概念にとらわれないよう、大人の「ふつうだろう」という常識や振る舞いを、子どもにあてはめない。



こうして出てきたものを見て改めて思ったのは、こうした力を育む上では、「大人自身が気をつけなければ・身につけなければいけない力・態度」が、子どもにできる・与えるモノゴト以上に重要になってくるということです。
つまり、こうした力は「教える」ものではない。
親も子どもと一緒に身につけていくものではないかと思います。

じゃあ、それをどう身につけるかというと、仕事の中で意識してやってくしかないように思いますが、ここについてはまた別の機会に論じたいと思います。
(※ご参考までに:『子どもは本当に目クソを食べているのか?』


ところで、アイデアの交換中に、気になる言葉が耳に入りました。

「子どもは、怒られるのをいやがる」
「失敗したがらない」

どういう文脈でこの言葉が出たのか定かではありませんが、「失敗すると、(親に)怒られる」→
それを「子どもがいやがる」→なので「失敗したがらない」ということであれば、これは由々しき問題です。
未知に挑んでいくうえで、失敗は避けて通れません。
プロジェクトとは不確定要素の、未知変数が非常に多いものであり、そもそも成功の可能性が低いものです。

必要なのは、『挑戦した。失敗した。何の問題もない。再び挑戦せよ。再び失敗せよ。よりよく失敗せよ(サミュエル・ベケット)』の精神です。

この言葉を聞いて、私は最近気になるアーネの言動を思い出しました。

アーネは4歳ぐらいまでは、「アーネは、アーネのことがだいすきだよ!」と口にしておりました。
私はこれを「自己肯定感」の現れととらえ、とても好ましいこととしておりましたが、6歳前後から、なにか工作をしていたり、ゲームをしていたりすると、

「アーネがバカだから失敗した」

といった、自分を貶めるようなことを口にするようになったのです。

自分のことを好きになれない人間が、他者のことを好きになれるだろうか。
何かうまくいかなかった時、「自分がバカだから(能力が低いから)」と考えてしまう人間に、プロジェクトを進めていけるだろうか。
ちょっとしたことで心が折れてしまっては、未知な社会ではとても生きていけません。

アーネのこうした言葉を聞くたび、私は「それ(その失敗、うまくいかなかったこと)はアーネの性格や人となりとは関係がない。ただ、やり方(方法)がうまくいかなかっただけで、別の方法が試せばよいのだ」ということを諭しているのですが、正直この諭し方が良いのかは、まだわかっておりません。

勉強会の最後に、小沢先生からこの自己肯定、自尊感情といった「自分を認め、好きになる」ための考え方、心の持ちようについて講演頂きました。
この内容について、まだ私の中でうまく理解ができていないため、みなさまには恐れ入りますが、下記のグラレコをご覧頂き、ぜひELCのホームページやセミナーに訪れて頂ければと思います。



来週は、本勉強会の大人編として、私が提唱している「プロジェクト譜」を使って、自身の親の介護をテーマにした勉強会を開催します。
ご興味を持って頂き、ご都合がよろしければ、ぜひお越しください。


応募はこちらから。
https://peatix.com/event/349433/view

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